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No.05|今の私へ。

  • 執筆者の写真: GIGI_mtk
    GIGI_mtk
  • 8月30日
  • 読了時間: 4分

「日本の美意識」から始まった、私自身への問い。


少し前、ある家の竣工写真を見ていた。

蔵のような佇まいを持つ家。

漆喰の白。 黒い木部。 瓦屋根...

その中に、妙に目が止まる写真がいくつかあった。

明るくきれいに撮られた写真というより、光と影の濃淡が強く残っているコンセプチュアルな写真だった。


その写真を見ながら、ふと谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を思い出した。

そして、「日本の美意識」という言葉が頭に浮かんだ。


以前、自分のブログでも一度、日本の美意識について書いたことがある。

そのときは、線の構成や素材、その調和や対比のようなものを考えていたように思う。


でも今回は、少し違った。


先日、杉本博司の「絶滅写真」を見たときにも、なぜか同じ「日本の美意識」という言葉が頭をよぎった。


それで、昔撮った京都や福井の写真を見返してみた。


龍安寺。 大徳寺。 南禅寺の山門。 銀閣寺。 瑠璃光院。 東寺。 永平寺。


まだ本でしか見たことのない桂離宮もそうだし、地方で偶然立ち寄った名もない神社や寺、武家屋敷、古い民家にも、同じようなものを感じることがある。


近代建築でも、村野藤吾の谷村美術館へのアプローチや、谷口吉生の土門拳記念館、内藤廣の海の博物館などには、どこか似た感覚を覚える。


何が共通しているのだろう。


光と影。 静けさ。 白と黒。 間。 飾られていないこと。 素であること。 素材そのもの。


そんな言葉が浮かぶ。


瑠璃光院

瑠璃光院


どうも私は、箔が貼られていないところに魅了されているらしい。


そう考えると、少し面白いことに気づく。

金閣寺を見ても、私の中では「日本の美意識」という言葉とあまり重ならない。

もちろん、金閣寺が美しくないという話ではない。

高校の修学旅行以来、久しぶりに見た金閣寺には、「あの頃の自分と今では、見え方がどう変わったのだろう」という別の興味があった。

京都にはその後何度も行っているのに、それまでは、なぜかいつも足が向かなかった。


一方で、古民家の再生などで、もう朽ちる寸前のような家に足を踏み入れた瞬間、突然、背筋に電気が走ることがある。

家具もない。 照明もない。

いわゆる「美しい空間」が、目の前に広がっているわけでもない。

それなのに鳥肌が立つ。

恐怖ではない。

共感とも少し違う。

共感の、もう少し先にあるような何か。


うまく言葉にできない。


町屋の坪庭

町屋の坪庭


ニュージーランドにいた頃、

朝、釣りをしながら何もない海を眺めて、「美しい」と思うことがあった。

水平線から朝日が昇る瞬間にも、「美しい」と感じた。

でも、その美しさと、朽ちかけた古民家に入った瞬間の感覚は、自分の中では明らかに違う。



朝日が昇るころ Devonport NZ

朝日が昇るころ Devonport NZ


なぜ同じ「美しい」でも、身体の反応が違うのか。 なぜあるものには「日本」を感じ、あるものには感じないのか。 それは日本の美意識なのか、それとも私自身の美意識なのか。


そして、もうひとつ妙な問いが浮かぶ。


これは、私が日本人だから感じるのだろうか。

それとも、二度海外で暮らし、日本を内側と外側の両方から見るようになったからなのだろうか。


考えてみれば、京都を旅したときも、海外で暮らしていたときも、妻は一緒だった。

では彼女は、龍安寺や永平寺を見て、私と同じところに「日本の美意識」を感じていたのだろうか。


同じ場所に立って、同じものを見ていても、見えているものまで同じとは限らない。

そうなると、「日本人だから」というだけでも説明できそうにない。


私は坂本龍一の曲が好きだ。

亡くなる前のコンサートで弾かれたピアノの旋律が、今でも私の心の底に刺さって抜けない。


建築でもない。 寺でもない。 古民家でもない。


でも、どこか同じ場所が反応しているような気もする。


音そのものなのか。

音と音の間なのか。

消えていく余韻なのか。


そこにも、静けさや間のようなものを感じているのだろうか。


よく分からない。


日本の美意識から始まったのに、いつの間にか、自分の美意識の話になっている。

そしてさらに、その美意識が、自分の何をつくっているのかまで気になり始めた。


美意識というものは、単なる「好み」なのだろうか。


それとも、

何に目が止まるか。

何を美しいと感じるか。

何を残したいと思うか。

何を余計だと感じるか。


そんな、自分の視点や判断のもっと手前にあるものなのだろうか。


そもそも、私の美意識はどこから来て、私の何をつくっているんだろう。

こういう意識は、

人の何を形成するのか。

どう作用するのか。

視点は。 認識は。


はてしない疑問ばかり。


答えを探す前に、本質を探そう。


by GIGI

 
 
 

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